伊藤計劃はやっぱりすごい
ひとつ前の記事にわたしは「人間の人格とは、一つの物語である」と書いた。今日、伊藤計劃記録Ⅱを読んでいたらそこに収録されているエッセイ「人という物語」に全く同じ発想が、いや、わたしよりもずっとわかりやすく整理された形でそれが述べられていた。そこにははっきりと
「人間は物語でできている」
と書かれている。わたしが言いたかった内容そのままで。さらにそれよりも深い射程を持って語られていた。わたしには思いもよらなかった。それが人が子供を持つ理由になりうるなどと。それが脳に意識が宿る理由と見なせるなどと。それがゆえ、それ自身を語りうる、ということを。わたしには思いもよらなかった。語られ、伝えられる、そのために、そのためだけに存在するもの。物語。人間が物語でできているならば、何かを伝えるということはほとんど定義上の本能だ。わたしは十年以上前の承太郎の言葉を思い出す。思い出し、そして生まれて初めて実感として理解する。
「人に何かを伝えるということは素晴らしいことだ」
「伝える=物語る」ということはほとんど「人間として生きる」ということと同義となった。
今日は記念すべき日だ。人間の本質の一側面が昨日よりもクリアに、明確になった。伊藤計劃はやっぱりすごい。あなたというフィクションはここに、わたしというフィクションに永劫取り込まれるだろう。ありがとう。